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R&Dプロジェクト「3D x LLM」にてModel Context Protocol(MCP)を採用し “対話型3Dパイプライン” の実証実験
〜自然言語指示をMCP経由で外部アセット検索・配置コマンドへ変換。クリエイティブワークフローの自動化と効率化を実証実験〜
当社では最新の研究開発(R&D)成果として、MCP (Model Context Protocol) を用いてLLM(大規模言語モデル)と3D制作ツール、さらに3Dデータプラットフォーム(3Dasset.io)を統合するシステムの実証実験を行いました。
本記事では、IZUTSUYAが持つ「高精細な3Dデータ処理技術」と、Anthropic社などが提唱する新規格「MCP」が融合することで、クリエイティブ業界や産業DXにどのような革命をもたらすのか、その技術的特長を解説します。
開発の背景:3Dデータ活用の「専門性の壁」と「接続の壁」
建築、ゲーム、メタバース、製造業など、あらゆる分野で3Dデータの需要は急増しています。しかし、シーン構築には、BlenderやUnity、Unreal Engineなどの高度な専門知識に加え、外部マーケットプレイス(例:3Dasset.io)から適切な素材を探し出し、購入・ダウンロードして配置するという煩雑な手間(接続の壁)が存在します。
当社では、この課題に対し「MCP (Model Context Protocol)」の導入を検討。「言葉(自然言語)がそのまま3D操作コマンドになる」環境を標準プロトコル上で構築することで、非エンジニアでも直感的に3D空間をディレクションできる未来を目指しています。
技術の核:MCPによる「3Dシーンオーケストレーション」
今回の実証実験における最大の特徴は、LLMと3Dエンジン、さらに3Dasset.ioの通信にMCPサーバーを実装した点にあります。 MCPという標準規格を採用することで、LLMは「外部アセットの検索・推奨」から「エンジンへの配置スクリプト実行」までを安全かつシームレスに行えるようになります。
実行プロセス例:外部アセットの検索・推奨と自動配置
ユーザーの抽象的な指示に対し、MCPが3Dasset.ioと連携し、最適なデータを提案・配置するまでのフローを解説します。
ユーザーの指示: 「歴史ある日本家屋の和室に、日本刀と花瓶を飾って」
システム処理(MCP workflow):
1. 意図解釈と検索: LLMが指示を解析し(必要な要素:和室、日本刀、花瓶、歴史的な雰囲気)、MCP経由で3Dデータプラットフォーム(3Dasset.io)の検索APIを呼び出します。
2. 推奨(レコメンド): 検索結果から、ポリゴン数やテクスチャの質感がシーンに合う最適な候補をLLMが選定し、ユーザーに提示します。(例:「この江戸時代の銘刀モデルと、古伊万里風の花瓶はいかがですか?(購入/承認)ボタン」)
3.購入・取得: ユーザーが承認すると、MCPが決済API(検証環境ではモック)を介して処理を行い、アセットのダウンロードURLをセキュアに取得します。
4.自動配置: MCPが3Dエンジン(Unity等)側のインポートツールを起動。取得したデータをエンジン内に取り込み、シーン内の適切な場所(例:床の間)へ自動的に配置します。
5.即時反映: 3Dエンジン内で即座にシーンが更新され、指定通りの空間が完成します。

想定されるユースケース
MCPによって3Dツールと外部資産が「AIの指先」で繋がることで、以下のようなシーンでの活用が期待されています。
Case 1: 都市開発・建築シミュレーション
施主との打ち合わせ中に「ここの街路樹を桜に変えたらどう見えるか?」といった要望が出た際、エンジニアはその場でAIに指示するだけです。MCPが適切な植栽アセットをライブラリから呼び出し、ビジュアルを即座に修正・提示します。
Case 2: ゲーム・映像制作のプロトタイピング
レベルデザイナーが「サイバーパンク風の路地裏」というコンセプトをAIに伝えると、MCPが外部マーケットプレイスから必要なネオン看板やドラム缶のアセットを調達・配置し、ベースとなるシーンを自動生成します。クリエイターは「素材探し」の手間から解放され、クオリティアップの作業に集中できます。
今後の展望:IZUTSUYAが目指す「3Dの民主化」とMCPエコシステム
今回の実証実験は、今後のAIの進みに従って、より有効性を示すであろうMCPのテストを行うことが主な目的でしたが、本技術を社内の制作フロー効率化に留めず、「3D操作用MCPサーバー」の外部パートナーへのAPI提供や、デジタルツイン管理プラットフォームへの統合を視野に入れています。
高精細な「リアリティ(現実)」をデジタル化してきたIZUTSUYAが、今度はそのデータを「インテリジェンス(知能)」と「MCP」で自在に操る領域へ、デジタルコンテンツ制作の在り方を根本から変えられるよう挑戦を続けて参ります。
【3D&4D クリエイター、エンジニア募集中】IZUTSUYA Inc.では3D&4D、特にGaussian Splatting技術に興味のあるクリエイターやエンジニアを募集しています。ご興味ある方はお気軽にお問い合わせください。