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3次元点群×ブロックチェーンで本人認証を刷新!Neural IDが描く「なりすまし不可能」な未来
本日、当社のR&Dチームは、3D Gaussian Splatting(3DGS)技術を活用した次世代顔認証システムの技術デモを公開しました。
この記事では、私たちがなぜこの技術に取り組むのか、現在公開中のデモで何ができるのか、そして私たちが描く未来のビジョンについて、技術的な観点を交えながらお伝えします。
私たちが解決したい課題
デジタル社会の「信頼の危機」
私たちの日常は、デジタル認証で溢れています。
スマートフォンのロック解除、銀行アプリへのログイン、オンラインでの契約手続き——「あなたが本当にあなたであること」の証明は、デジタル社会を支える基盤となっています。
しかし、その基盤が今、揺らいでいます。
生成AIの進化により、1枚の写真から本人そっくりの動画を作成することが、誰にでも可能になりました。SNSに投稿した自撮り写真が悪用され、知らないうちに自分名義の口座が開設される——そんな被害が、現実に起きています。
従来の2D画像ベースの顔認証では、こうした高度な偽装を見破ることは、原理的に困難です。
「平面の情報だけで、立体的な人間の顔を完全に捉えることはできない」
この単純な事実が、私たちの出発点でした。

私たちのアプローチ:3D Gaussian Splatting
なぜ3DGSなのか
3D Gaussian Splatting(3DGS)は数百万個の「ガウシアン」と呼ばれる楕円体の集合で3D空間を構成します。
私たちが3DGSに着目した理由は、3つあります。
1. リアルタイム性
3DGSは、従来技術と比較して圧倒的に高速なレンダリングが可能です。認証という「待たせてはいけない」ユースケースにおいて、この特性は決定的に重要です。
2. 高い表現精度
各ガウシアンは位置、色、透明度、形状の情報を保持し、顔の微細な凹凸や質感まで忠実に再現できます。これにより、2D画像では捉えられない「顔の立体構造」を認証に活用できます。
3. 標準化されたデータ形式
3DGSデータはPLY形式で保存され、様々なツールやプラットフォームで扱うことができます。エコシステムの広がりは、技術の普及において重要な要素です。
技術デモのご紹介
体験できること
現在公開中のデモサイトでは、3DGSを用いた顔認証の基本的なフローを体験いただけます。
デモサイト:https://3d-facetracking.com
Step 1:3DGSデータの登録
デモツールのため、3DGSの生成までを同ツール内では提供していないため、お手持ちの3DGSデータ(PLY/SPLAT/JSON形式)をアップロードしていただく必要があります。
アップロードされたデータは、3Dビューワーに点群として表示されます。マウスの左ドラッグで回転、右ドラッグで並行移動が可能です。数百万点の点群がリアルタイムで描画される様子を、ぜひ体感してください。
Step 2:カメラの起動
「Activate」ボタンをクリックすると、Webカメラが起動します。
画面にはリアルタイムの映像が表示され、BlazeFace(TensorFlow.js)による顔検出が開始されます。検出された顔には、サイバーパンク調のオーバーレイ(コーナーブラケット、ランドマーク、信頼度スコア)が表示されます。
Step 3:認証の実行
「Verify」ボタンをクリックすると、認証プロセスが開始されます。
左パネルではスキャンビームが上から下へ移動し、それに同期して右パネルでは登録済みの3DGSデータが徐々に出現します。この演出は、「認証が進行している」ことを視覚的に伝えるためのものです。
約2.5秒でスキャンが完了し、マッチ率がパーセンテージで表示されます。70%以上で「ACCESS GRANTED」、それ未満で「ACCESS DENIED」となります。
技術仕様
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 対応フォーマット | PLY(ASCII/Binary)、SPLAT、JSON |
| 3Dレンダリング | Three.js(WebGL) |
| 顔検出 | BlazeFace(TensorFlow.js) |
| 対応ブラウザ | Chrome、Firefox、Safari、Edge(WebGL2対応) |
| 認証時間 | 約2.5秒 |
デモの位置づけ
現在のデモは、3DGS技術を用いた顔認証の「体験」を提供するものです。
デモサイトの認証ロジックは、顔検出の信頼度や顔のサイズ・位置などを基にスコアを算出する簡易的な実装となっています。これは、3DGSの可能性を直感的に理解いただくためのプロトタイプであり、本番環境での利用を想定したものではありません。
本格的な3DGS照合アルゴリズムの実装は、次のフェーズで取り組む予定です。
私たちが描く未来:統合APIプラットフォーム構想
現在のデモの「その先」
デモサイトでは、簡易に体験していただくために3DGSデータを「事前に作成して持ち込む」形式を採用しています。しかし、私たちが目指すのは、3DGS生成から認証までをシームレスに提供するエンドツーエンドのAPIです。

以下の統合APIの開発を進めています。
統合API構成
① 3DGS生成API
概要:スマートフォンで撮影した動画または複数画像から、顔の3DGSデータを自動生成
技術的アプローチ:
- 顔領域の自動検出とクロッピング
- Structure from Motion(SfM)による初期点群生成
- 3DGS最適化(位置、共分散、色、不透明度)
- エッジ処理とクラウド処理のハイブリッド構成
目標性能:10秒以内での3DGS生成(30フレーム入力時)
② ブロックチェーン登録API
概要:生成された3DGSデータを暗号化し、ハッシュ値を当社がL1に引いたブロックチェーンに刻印
設計思想:
- 生体情報そのものはオフチェーンに保存
- オンチェーンには「存在証明」のみを記録
- GDPRの「忘れられる権利」との両立(オフチェーンからの削除は可能、オンチェーンのハッシュは無効化マーク)
③ 認証API
概要:リアルタイム顔データと登録済み3DGSを照合し、認証結果を返却
技術的特徴:
ゼロ知識証明(ZKP)の活用
従来の認証システムでは、生体情報をサーバーに送信して照合を行います。これは、情報漏洩リスクを内在的に抱えるアーキテクチャです。
私たちは、ゼロ知識証明を活用することで、生体情報そのものを外部に送信することなく「本人であること」のみを証明する仕組みを構築します。
[クライアント側]
1. カメラから顔データを取得
2. ローカルで特徴量を抽出
3. 登録済み3DGSを取得・復号
4. ローカルで照合を実行
5. 「照合成功」のZK証明を生成
[サーバー側]
6. ZK証明を検証
7. 認証結果(成功/失敗)のみを記録
この設計により、サーバーは一切の生体情報に触れることなく、認証の正当性のみを検証できます。
④ 監査ログAPI
概要:認証履歴をブロックチェーンに記録し、改ざん不可能な監査証跡を提供
記録項目:
- 認証日時(タイムスタンプ)
- 認証結果(成功/失敗)
- 認証方式(3DGS照合)
- デバイス情報(ハッシュ化)
用途:コンプライアンス対応、不正アクセス調査
「自己主権型ID」という思想
従来モデルの問題
従来の認証システムでは、生体情報は企業のサーバーに集中管理されてきました。
このモデルには、構造的な問題があります:
- 情報漏洩リスク:集中管理されたデータは、攻撃者にとって魅力的なターゲットとなる
- プライバシーの懸念:「自分の身体情報を他者に預ける」ことへの心理的抵抗
- ベンダーロックイン:認証基盤を特定企業に依存することのリスク
私たちが目指すモデル
Neural::IDが目指すのは、「自分の顔は、自分だけが管理する」という自己主権型IDの実現です。
- 3DGSデータは、利用者自身の管理下で暗号化・保存される
- 認証時には、ゼロ知識証明により「本人であること」のみが証明される
- 生体情報そのものは、一切外部に送信されない
この設計は、EUのeIDAS 2.0規則が推進する「European Digital Identity Wallet」や、日本のデジタル庁が提唱する「Trusted Web」構想と、思想的に軌を一にするものです。
技術的チャレンジと取り組み
3DGS生成の品質安定化
現状のスマートフォンアプリで生成される3DGSは、照明条件や撮影角度によって品質にばらつきが生じます。
私たちは、以下のアプローチで品質安定化に取り組んでいます:
- 撮影ガイダンスUI:最適な撮影角度・照明をリアルタイムで指示
- AI品質補正:ノイズ除去、欠損補完の自動化
- マルチモーダル入力:RGBカメラ + Depthセンサーの併用(対応デバイス)
ゼロ知識証明の効率化
ZKPは強力なプライバシー保護技術ですが、証明生成に計算コストがかかるという課題があります。
私たちは、以下の最適化を検討しています:
- ZK-SNARKsの採用:証明サイズの圧縮、検証時間の短縮
- 特徴量の次元圧縮:ZKP対象データの最小化
- 専用ハードウェア連携:将来的なセキュアエンクレーブ活用
法的・制度的課題
生体情報のブロックチェーン保存に関しては、各国の個人情報保護法との整合性確保が必要です。
私たちの設計方針:
- オンチェーン/オフチェーン分離:生体情報そのものはオンチェーンに保存しない
- 削除可能性の担保:IPFSからのデータ削除により「忘れられる権利」に対応
- 法務専門家との連携:GDPR、個人情報保護法への準拠検証
おわりに
私たちNeural IDは、「信頼のインフラ」を作りたいと考えています。
デジタル社会において、「私が私であること」の証明は、あらゆるサービスの入り口です。その基盤が脆弱であれば、その上に築かれるすべてのサービスは砂上の楼閣となります。
3D Gaussian Splattingという最先端のコンピュータグラフィックス技術と、ブロックチェーンという分散型信頼基盤。この二つを融合させることで、私たちは「なりすまし不可能」かつ「プライバシーを尊重する」認証の実現を目指しています。
今回公開したデモは、その第一歩に過ぎません。
ぜひデモサイトで3DGS認証を体験いただき、私たちが描く未来の一端を感じていただければ幸いです。フィードバック、ご質問、協業のご相談など、お気軽にお寄せください。