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Atlasデータ徹底解説:ゲーム・3Dレンダリングのパフォーマンスを劇的に向上させる技術とは?

2025.05.15 ノウハウ

1. なぜAtlasデータが生まれたのか?

ゲーム開発や3Dレンダリングにおいて、多数のテクスチャを扱う際に発生する問題として、ドローコールの増加メモリ管理の非効率性が挙げられます。個別のテクスチャを大量に使用すると、描画処理の負担が増し、パフォーマンスが低下します。

そこで登場したのがテクスチャのAtlas(アトラス)化です。複数のテクスチャを一枚の大きなテクスチャにまとめることで、ドローコールの最適化とメモリ効率の向上を実現しました。

2. そもそもAtlasとは?

Atlasとは、複数の小さなテクスチャ(スプライトやUIパーツなど)を、一つの大きなテクスチャにまとめたものです。これにより、ゲームや3Dアプリケーションでは、1回の描画で複数のテクスチャを同時に利用できるため、レンダリング効率が向上します。

例えば、2Dゲームにおいてキャラクターのアニメーションフレームを個別のテクスチャで管理する場合、それぞれのフレームごとにテクスチャの読み込みが発生します。しかし、Atlasデータを使用すると、キャラクターのすべてのフレームを1枚の画像にまとめ、UVマッピングを活用して描画することで、テクスチャの読み込み回数が激減しパフォーマンスの最適化が可能になります。

3. Atlasデータの特徴

① ドローコールの削減

複数のテクスチャを1つに統合することで、GPUへの描画指示(ドローコール)の回数を減らし、レンダリングを高速化します。

② メモリ管理の最適化

バラバラのテクスチャを個別に管理するよりも、一枚のテクスチャとして扱うことでキャッシュ効率が向上し、不要なテクスチャのロード回数を削減できます。

③ UVマッピングによる部分描画

テクスチャ内の特定の領域をUV座標で指定し、個別のスプライトやオブジェクトに適用することが可能です。

④ ゲームエンジンやグラフィックAPIとの相性が良い

UnityやUnreal Engineなどのゲームエンジン、OpenGLやDirectXなどのグラフィックAPIでも幅広く利用されています。

4.Atlasデータと個別テクスチャの比較

方式 特徴 欠点
Atlasデータ 低ドローコール・メモリ効率向上 テクスチャの再配置が必要になる場合がある
個別テクスチャ 管理がシンプル ドローコールが増加し、パフォーマンスが低下

Atlasデータは、シンプルな実装と高い互換性を持つ点で、特に2Dゲームやモバイルアプリ開発において有用です。

5. メリットと活用法

① 2Dゲーム開発

スプライトアニメーションや背景パーツの統合により、レンダリング負荷を軽減できます。

② 3Dモデルのテクスチャ管理

キャラクターや環境オブジェクトのテクスチャをまとめることで、シェーダーの切り替えコストを削減できます。

③ UIデザインの最適化

ボタンやアイコンをまとめることで、一括描画が可能になり、レスポンスが向上します。

6. 3Dアセット用Atlasデータの制作方法

現在、ゲームなどの用途において、リッチでリアルな描画と動作の軽量化を両立するため、3Dデータに適したAtlasデータの需要が非常に高まっています。
写真をもとに制作された凹凸などの様々な情報を持った複数の画像セットを、簡素な3Dアセットのテクスチャとして適用するだけで、まるでハイポリゴンで描画されたように美しく緻密な3D描画を実現します。

この写真をもとに制作する画像セットを『テクスチャマップ』または『PBRテクスチャ(PBRマテリアル)』といいます。
では、作り方を見てみましょう。

ステップ1:素材の準備

植物、石や布、工業製品などの素材を収集・撮影します。
なるべく、対象がフラットになるように真上から、また光の当たり方が均一になることを意識します。
撮影は高品質、高解像度で行うほど、より精緻なテクスチャマップを生成することができます。

ステップ2:視覚的なアトラス生成

画像加工ソフトを使い、背景を透過させて素材をアトラス(集合配置)化し、PNGやTIFFなどで保存します。
3Dアセットに適用したときに高品質な結果を求めるのであれば、4000x4000px~8000x8000pxのキャンバスに素材を配置してください。

なお、基本的には1つのキャンバスには1つの素材だけとします。
例えばチューリップのアトラスを作る場合は花の全形と、分解した各パーツだけを並べるようにします。隙間があっても、桜の花びらや石など、他の素材は入れません。
複数の素材を混在させてしまうと、逆にゲーム等の挙動が重くなってしまう場合があるので、ご注意ください。

ステップ3:チャンネルごとの書き出し

テクスチャマップには以下のような種類があります。
必ずしも全てが揃っている必要はありませんが、1~7は使用頻度の高いマップです。

No 日本語名称 英語表記 マップの役割
1 カラーマップ
ディフューズマップ
ベースカラーマップ
アルベドマップ
Color Map
Diffuse Map
Base Color Map
Albedo Map
物体の基本色を定義するカラー情報。
2 法線マップ Normal Map 表面の凹凸感を擬似的に表現するマップ。
3 粗さマップ
(スムースネスマップ)
Roughness Map
(Smoothness Map)
表面のザラつきや光の拡散度の情報。
(表面の滑らかさと光の明瞭度の情報。粗さマップの反転)
4 金属度マップ Metallic Map 金属的な表現の適用度。
5 スペキュラーマップ Specular Map 反射の強さや色を制御する情報(Specular方式用)。
6 AOマップ
オクルージョンマップ
AO Map
Ambient Occlusion Map
影になりやすい部分の暗さを追加するマップ。
7 ハイトマップ
ディスプレイスメントマップ
Height Map
Displacement Map
実際にジオメトリを変形する高さ情報。
8 透明度マップ Opacity Map
Transparency Map
透明部分を指定して形状を制御。
9 エッジマップ Edge Map 輪郭強調やマスク処理のための情報。
10 発光マップ Emissive Map 自発光する部分を指定し光らせる。

いくつかのマップは一般的な画像加工ソフト(Photoshopなど)でも生成できますが、テクスチャマップを生成できる専用ソフトを活用すると、より精度の高いマップを生成できます。

番外編:ゲームエンジンなどへの導入

生成したアトラスは、Unity、Unreal Engine、Blenderなどに取り込んで、UVオフセットで個別の素材を切り出して使用します。
この手法により、複数のアセットが同一マテリアルで描画されるため、エンジン上での描画負荷を大幅に削減できます。

効果 内容
描画最適化 複雑なシーンでも高フレームレートを維持しやすくなる
品質一貫性 テクスチャ管理を統一することで、制作物の見た目にばらつきが出にくくなる
作業効率化 GUIベースの操作で属人化を防ぎ、トレーニングコストを削減
資産の再利用 アトラスのテンプレート化により、他案件への転用が容易に

また、自作したAtlas・マップデータは、3Dasset.ioに出品することで、簡単に販売することも可能です。ご興味のある方はinfo@izutsuya.ioまでお気軽にお問い合わせください。

7.  Atlasデータの購入

Atlas化されたテクスチャマップデータは、当社が運営する3Daseet.ioから購入することで入手できます。3dasset.ioは他のマテリアルサイトと違い、日本の会社が運営するマーケットです。そのため、決済は日本円が利用可能で、気軽に購入することができます。サポートも日本語で対応しますので、日本人クリエイターにとっての心強い味方になれることを目指します。