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Gaussian Splatting点群データ統合ツールの開発 ー 群馬・伊勢崎神社3D化の事例から
当社では、複数方向から取得したGaussian Splatting(ガウシアンスプラッド)データを自動で統合するツールのβ版を開発しました。その背景には、実際の3Dスキャン現場における複雑な課題が存在します。
■ 撮影対象:群馬県・伊勢崎神社
この取り組みでは、群馬県の伊勢崎神社を対象に、東西南北・上下・ドローンを駆使した全方位撮影を実施しました。伊勢崎神社は地域に根ざした歴史的建造物であり、文化遺産のデジタル保存としても大変意義深い撮影となりました。

■ 撮影時の課題と3D生成への影響
撮影・生成の過程で、以下のような3D化にマイナスとなる要素が浮き彫りとなりました。
- 周囲環境の影響:神社は市街地に位置し、周囲には様々な建築物が密接。背景ノイズが多く混在し、不要物の混入が生じました。
- 植生による遮蔽:本殿の周囲を大きな木々が囲んでおり、視界が遮られるアングルが多数発生。
- 気象条件の偏り:撮影日は天候が良すぎ、強い直射日光によって陰影が極端に形成され、情報欠損領域が多発。

■ 断片的な3D構築
個々の方向(東西南北)から取得された画像データでは、それぞれ単方向からの3D構築には成功したものの、多方向データの取り込みでは別方向からのデータを同じ被写体と認識せず、再構築が始まってしまい、取り込みデータ全てが学習時に繋がらないという大きな課題が残りました。
撮影は細かく行なっていたため、読み込み画像が上手く繋がるように画像の繋がりを意識して様々試しましたが、一つの被写体に対して綺麗に構築するのがスムーズにいきませんでした。

ただし、上記画像のように単一方向からのみ見た場合の3D構築は上手く行きました。そのため、東西南北4方向、4つのデータが生成できたため、このデータを結合(統合)出来ないかという検討に入りました。
■ 解決策:点群ベースの後処理統合ツールの開発
同じ点群データでも既存のPlyファイルの統合は無料ツールであるCloudCompareなどでは実現しておりますが、Gaussian Splatting点群データに関してデータ統合ができるツールが公開されていなかったため、私たちはこの課題を解決するために、点群ベースで複数のGaussian Splatting点群データ(.ply)を統合する専用ツールの開発に着手しました。
以下の特徴を備えています。
- 各方向から得たPLYデータを自動位置調整・スケーリング補正
- 数万点単位のデータ処理を高速に実行
- マージ時の重複点の平均化、透明度や信頼度の重み付け補正
これにより、バラバラに生成された方向別の点群データを1つの統一モデルに結合し、視覚的にも一貫性のある3D表現が可能になりました。

完成した統合データ ※データが重たいため、PCで閲覧してください(モバイルだと途中でアクセスが途切れることがあります)。
■ 今後の展望
このツールは、文化財や建築物に限らず、Gaussian Splattingによる3D生成のための撮影時に発生する撮影環境の難しさや、撮影データ不足があった際の後処理で幅広い対象に応用可能です。今後は、統合精度のさらなる向上に向けて、特徴点自動マッチングや機械学習による自動補正アルゴリズムの実装も視野に入れています。
また、業界を盛り上げていくためにこのツールのOSS(オープンソース化)や、Webベースでの簡易統合機能の実装も計画中です。
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